** 夜が明けたら ** / 50のお題・14



  薄桃色の空が広がり始め、夜の空にちりばめられていた星々もその存在を名残惜しげに消してゆく時間。春とはいえ、太陽がすっかり顔を出すまではまだまだ肌寒い。
  コマンドベースから数キロ離れた場所で陣営を組んでいるのは、キャリバー隊。演習のため前夜からその場所に待機中なのだが、皆はまだテントの中で夢の中だろう。
  ムゲン・キャリバーの前でひっそりと待つは、草を踏みしめる音のする方を見た。肩を窄めながらこちらへ向かってくるのは、ドルバック隊リーダー、無限真人だ。朝が苦手だというのは本当らしい。大きなあくびをしながら、腕を上げて伸びまでしている。

「おはよう、真人さん」
「お、相変わらず早いねぇ、ちゃん」

  おはよう、と挨拶を交わすとまたすぐにあくびをする。まるで悪びれる様子もないのは、この場所に真人としか居ないと判っているからなのだろう。
  が現場と管理部門を繋ぐ調整役に抜擢されて、もうすぐ一年が経つ。初めは双方から煩わしがられていたものの、ワンクッションあることでスムーズに事が運ぶと納得されてからは、手の平を返したように可愛がられている。どちらにも媚びることなく、仕事に厳しい反面、フォローも忘れない。サバサバした性格と、偶に見せる天然振りは、男女分け隔てなく好かれている。あの高城大佐がのことを口に出して褒めていたことなどを考えれば、その信頼は絶大だろう。

「まだ、完全に起きてないって感じだけど?」
「当ったりー。まだ眠いって」
「今日の演習はお昼過ぎには終わる予定だから……」
「上手くいけば、だろ?」
「上手くいくようにするのも隊長の務めよ」

  今日の演習の詳細が入った端末を真人に渡すと、自分が乗ってきたオートジャイロへと足を向ける。
  ギリギリまで演習の内容は知らされず、本部からの無線も切られるため、最後の指令はこうしてが情報伝達することになっているのだ。

「え、もう帰るのか?」
「真人さんにそれを渡したら、次はスタンレーさんに渡さなくちゃならないの」
「……ああ、スタンレーね」

  明らかに、さっきとは違う拗ねたような表情を浮かべる真人に、は苦笑いを浮かべる。
  真人が拗ねる理由ははっきりと判らないが、スタンレーの名前を出した途端に拗ねたということは、また彼と喧嘩でもしたのだろうか。
  真人にしてみれば、もう少しと話していたかっただけなのだが、この後スタンレーと会うと知ってしまっただけで面白くない。そう、嫉妬しているのである。

「今日はキャリバー隊とタルカス隊の合同演習だから、スタンレーさんの所にも行かなくちゃならないの」
「判ってるけどさ」
「じゃあ、どうして拗ねてるの?」
「拗ねてないって」

  子供をあやすような口調になってしまうのは、相手が真人だからか。スタンレーが相手だとしたら、こんな口調にはならないだろう。いや、スタンレーが拗ねるところなど容易には想像出来ないのだが。
  口を尖らせてそっぽを向いてしまった真人の頬を両手で包むと、は無理矢理自分の方へと向かせる。
  至近距離にあるの顔に、真人の心臓は早鐘を打つ。

「目、覚ましてあげる」

  は、ちゅっ、と真人の唇に自分のそれを重ねた。

「!」
「どう? 目、覚めた?」

  驚きの余り、目を大きく見開いたままの真人の顔はみるみる内に真っ赤に染まってゆく。
  こく、こく、と縦に首を振るのが精一杯だ。

「じゃあ、今日の演習、無事成功するように祈ってるわ」

  いつもと変わらない笑顔を向けて、真人の元を去ってゆく。
  真人の姿が見えなくなった頃、真っ赤になった自分の頬を必死に冷まそうとするだったが、スタンレーの目は誤魔化しきれず、からかわれる羽目になったことなど真人は知る由もないのだった。





結局は両思いだった、って話。
スタンはのことは評価しているけれど、恋愛感情は全く持っていないのだった(笑)

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