** うそつき ** / 50のお題・46



「あー、真っ赤だわ」

  手鏡を覗くと、両目が真っ赤に充血していた。コンタクトを外して眼鏡に替えたものの、目のかゆみと痛みは止む気配がない。
  は目薬を点そうと、顔を上げる。目薬が一滴、頬に落ちた。

「う……失敗」

  気を取り直して、また一滴。

「なんで目に落ちないかな」

  落ちた場所はまぶたの上。目薬もまともに点せない自分に凹む。

「何やってんだ?」
「あ、真人」

  真人は、上から見下ろすようにの顔を覗き込む。

「うわ、目、真っ赤じゃねーか」
「だから目薬をね、点そうと思ってるんだけど上手くできなくて」

  少し口を尖らせて、手にした目薬を睨みつけるそれは、子供のようで。

「俺が点してやるよ」

  から目薬を受け取り、空いた方の手で彼女の顎を持ち上げる。しかし、は目を閉じたまま。

「……目、閉じたら目薬入んないだろ」
「怖いんだもん」
「怖いって、別に取って食うわけじゃないんだからさ」
「昔から苦手なんだってば」
「ったく、仕方ねーなぁ」

  何時になくビクつくに、真人の悪戯心が燻ぶる。
  真人は一瞬の隙を突いて、啄ばむようにの唇を奪う。

「!」

  思いもよらない真人からのキスに驚いたは、硬く閉じていたその瞳を大きく見開く。大きな瞳が真人の姿を映したそのときを逃す真人ではなかった。素早くの両目に目薬を点す。

「!!」
「終了」

  してやったりの真人と、あっという間の出来事に呆気に取られる

「……うそつき。取って食われた気分なんだけど」
「メインディッシュはまだだけどな」

  メインディッシュって何、と思わず突っ込まずにはいられないだった。





30分で書き上げた短編。
夢でこういうシチュエーションがあったので。
夢での相手は残念ながら真人じゃなかったのよね(涙)

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