** ホリデーピンクの再会 ・ おまけ **



ぐーきゅるるる

「……あ」

  すっかり二人の世界に浸っていた真人が自分を取り戻したのは、悲しいかなの声ではなく自分の腹の虫が鳴く音でだった。別の意味で顔を紅く染めた真人は、やっとのことで自分の腕の中からを解放する。

「ごめん」

  今までを抱き締めていたことに謝っているのか、腹の虫が鳴いたことに謝っているのか判断が付き難いが、には素直に謝っている真人が何だか可愛く見えてしょうがない。

「いいの。それより、これ、食べます?」

  手に持っていたレジ袋を差し出す。その中には、つい三十分前に買い出ししたものが。
  は真人の手を引いて、歩いて五分程の場所にある児童公園へ向かった。





  昼間は子供たちで賑わっているのだろうが、すっかり日が暮れてしまった今では昼の住人たちもおらず寂然としている。

「まだあったかい」
「揚げたてでしたから」

  ベンチでコロッケを頬張る二人。片手には缶ビール。
  美味しそうに食べる真人を見ているだけで、は自然と顔がにやけてしまう。

「でも、さんがビールって意外だった」
「どうして?」
「……若く見えるって言うか、飲めなさそうっていうか」
「社会人になってから暫く経つんですけどねぇ」
「暫くって言ったって、一、二年だろ?」

  の動きが止まり、うーん、と少し困ったような表情になり、その様子に何か禁句でも言ったのかと、真人も息を呑む。

「ねえ、真人さんって、いくつ?」
「今年で二十三」
「……」

  またしても沈黙。

「えっと、私、真人さんより年上だわ」
「……は?」

  自分よりも年上だと聞いて、驚いたのも無理はない。はどう見ても二十歳そこそこの娘に見えるのだ。下手をすれば、高校生と言われても不思議ではないくらい、は童顔であった。

「年上の女は嫌い?」

  は淋しそうに真人に問うた後、ビールを一口含んだ。
  まさか、と真人は慌てて否定する。

「正直、驚いたけど、歳は関係ないよ。俺が好きになったのはさんだし。それともさんは、年下の男は嫌いなのか?」
「まさか! 私は真人さんを好きになったのであって、歳なんて関係ないわ」
「だろ?」

  二人は顔を見合わせるとぷっ、とふきだして、大声で笑い出した。

「やっぱり、俺たち気が合うよな」
「ええ、本当に」

  二人が知った最初の幸せは、コロッケとビール、そしてデザートに豆大福。
  そんな幸せ。



そんなの食べてないで、どこかに晩ご飯食べに行けよ、ってツッコミは無しの方向で(苦笑)

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