** 弥生 ** |
桜が散っている。 まだ三月のはじめだというのに、季節はずれの桜が花びらをひらひらと降らせていた。 まるで、俺の心の殻を少しずつ剥がしていく『彼女』のようだ。 これが『愛情』だと気が付いたのは いつだったか……。 初めて会ったときから、 不思議と『友情』は感じていた。 女を意識せずに話せたからかもしれない。 以前付き合っていた女(ひと)は 仕事よりも自分が優位に立っていなければ許せないというプライドの高い女で、散々な目に遭った。 仕方ないじゃないか、仕事と比べろという方が無茶だ。 これが原因なのか、いつも一歩退いて女と接してしまう。 女はみんなプライドが高い生き物なんだ、と誰かが言っていたな……。 女が嫌いなわけじゃない、ただ、苦手なのだ。 なのに―――。 『彼女』は確かに可愛いと思う。 何かにつけて男どもが近寄ってくるのもうなづける。 しかしなー……。 めちゃくちゃ強いぞ? あの細い腕でその辺の兵士くらい軽く投げ飛ばすぞ? ちょっとからかうとすぐ怒るし、 部屋なんて、全然女の子っぽくないし(いや、中には入ったこと無いんだけどさ)、 色気もないし、 口げんかは負けたことがないし、 たまにとんでもないことしでかして心配させるし。 とにかく、お節介やきなんだよな。 ああ、そうか……。 『彼女』は気が利くんだ。 俺が一歩引いて『彼女』と接していたのに気が付いていたのかもしれない。 だから、嫌悪感を感じさせない距離にいつも居たのだ。 『彼女』の思いやりを感じたとき、 『友情』が『愛情』へ変わっていく自分の感情に驚きもした。 『彼女』との関係をこのまま壊したくなくて、 ずっと『友情』だと言い聞かせ続けた、この気持ち。 ずっと摩り替え、偽ってきた、自分自身の恋心。 桜の花びらが、それでも最後には吹雪のように散り去って、本来の姿が現れるように、 少しずつ、けれども加速をつけて心の殻を剥がしてしまう前に。 この桜が散り終わる前に『彼女』に会いに行こう。 素直に『好きだ』と言えるかどうか、自信は無いけれど。 |
懲りずにやっちゃいました…。
今回はホワイトデー企画(笑)。
真人ってこんなロマンチストじゃないと思うんですけどねー。
とりあえず、ラブラブだぞ、と(笑)。
to HOME / to Novel TOP